このページの要点
- クリック数・CV・CPA・ROAS・売上・順位・審査の通過・配信の継続など、保証しないものを具体的に列挙する。
- 媒体のポリシーの変更・審査の不承認・アカウントの停止・計測のずれは、受注者に帰責事由がない限り免責と書く。
- KPIや提案資料の数値は努力目標で、未達は債務不履行・減額・解除の理由にならないと書く。
- 相手方が消費者なら、勧誘時の断定的判断の提供は成果非保証の条があっても取消しの対象になり得る(消費者契約法4条1項2号)。
結論:保証しないものを具体的に並べ、「成果を目指す義務」を書き込まない
広告運用代行・集客支援の契約書には、ほぼ必ず「成果を保証しない」旨の条が入ります。ところが、事務所が作成・レビューした書類を見比べると、同じ趣旨でも書き方の細かさがまるで違い、紛争のときに効くかどうかもそこで分かれます。押さえておきたいのは次の4点です。
- 保証しないものを、クリック数・CV(コンバージョン。申込みや購入などの成果)・CPA・ROAS(広告費に対する売上の比率)・売上・順位・審査の通過・配信の継続などと具体的に列挙する。
- 媒体の審査・アカウントの停止・仕様の変更・計測のずれなど、受注者が支配できない事情を免責の事由として正面から書く。
- 提案資料の目標値やKPIは努力目標であり、契約の内容ではないことを書く。
- 同じ契約の中に「成果につながる提案をする」など、成果を目指す義務を自ら書き込まない。
このページでは、この4点を事務所の書類から紹介します。成果非保証と報酬の関係は報酬の決め方、SEO・MEOの順位の扱いはMEO・SEO・口コミの契約で詳しく扱います。
保証しないものの列挙を比べる
受注者の側で作成した書類から、成果を保証しない条の書き方を並べます。
| 契約 | 保証しないもの | あわせて書いたこと |
|---|---|---|
| 個人の広告運用者の基本契約 | クリック数、表示回数、CV数、CPA、ROAS、売上、利益、順位、審査通過、配信継続その他特定の成果 | 媒体の仕様変更・審査基準の変更・アカウントの停止・配信の制限・LPの品質など、受注者の支配を超える事情は免責 |
| 採用支援・Web広告の基本契約(クライアント向け) | 表示回数・クリック数・応募数・獲得件数・獲得単価・CV・売上・採用人数等 | 成果が出なくても、報酬の拒絶・減額・返金を求められない |
| 広告運用の代行会社 | 広告の配信結果、クリック数、コンバージョン数、売上その他の具体的成果 | 成果の達成を目的とした契約ではない。助言・分析・提案は発注者の判断材料にとどまる。非保証は報酬の条・免責の条とあわせて解釈する |
| 集客支援・マーケティングの基本契約 | 売上高・成約件数・問合せ件数等の向上 | 期待した成果(売上の増加率、問合せ件数の倍増など)が得られなくても責任を追及しない |
| LP制作+広告運用代行の個人の支援者 | 売上・集客・会員数などの増加(全体)と、広告運用代行による集客・売上・利益の向上(広告の条) | 全体の条と広告の条で二重に書く |
列挙が細かいほど、「この数字は保証しないと書いてあるが、あの数字は書いていない」という反論の余地が小さくなります。また、広告運用の代行会社の契約にある「助言・分析・提案は発注者の判断材料にとどまり、発注者の判断と実施の結果には責任を負わない」という一文は、受注者の提案に従った結果、売上が落ちたと言われる場面に備えるものです。非保証の条を報酬・免責の条と「あわせて解釈する」と書いておくのは、非保証の条だけを切り出して狭く読まれないための工夫です。
成果に連動しない報酬であることも、成果非保証と一組で書きます。採用支援の基本契約は、成果が出なくても報酬の拒絶・減額・返金を求められないと書き、時給制で架電を委託する通信回線の代理店の契約も、受託者が「特定の成果の達成を保証するものではない」と確認しています。
媒体の審査・アカウントの停止・仕様の変更
ネット広告は、媒体の審査に通らなければ配信できず、媒体のポリシー違反と判断されればアカウントが止まります。原因が受注者の運用にあるのか、商品やLPの内容にあるのか、媒体の側の判断の変更にあるのかで、責任の所在が変わります。事務所の書類には、この免責を版の途中で加えた例が複数あります。
事務所の書類での改訂 媒体の側の事情の免責を加えた例
マーケティング支援の月額契約
当初の案と改訂後の違いはこの1か所です。外部サービスの事情を一つの条にまとめて列挙しています。
採用向けSNS運用+広告の制作会社
審査に落ちた原因が発注者の素材や文言にあるときの責任を、発注者に戻す書き方です。
採用支援・Web広告のクライアント向けの基本契約は、媒体のポリシーの変更、審査の不承認・遅延、アカウントの停止・制限について、受注者に帰責事由がない限り責任を負わないと定めています。集客支援・マーケティングの基本契約も、外部のプラットフォームの仕様の変更、アカウントの利用の制限や抹消、発注者が提供した素材による権利の侵害を免責の事由に並べ、MAツールの導線の構築・運用の契約も、ツールやLINEなど第三者のサービスの仕様の変更・停止を免責としました。広告媒体だけでなく、計測・配信・決済に使う外部のツールも、受注者が支配できない事情として同じ条に入れておく必要があります。反対に、発注者の側の書類では、停止の原因によって責任を分ける書き方があります。SNS上のショップ機能への出店を支援する契約の改訂版では、受注者が他社を介さず直接運用を受託したアカウントが停止した場合に限り、停止期間中の運用費用相当額を上限に発注者が賠償を請求できるとし、発注者が必要な資料を出さない・受注者の是正の指示に従わない場合の停止や、審査基準・ポリシーの変更など媒体の側の停止は免責としました。アカウントの復旧は保証しないとも書いています。アカウントの名義と停止後の扱いは広告アカウントの名義と終了時の引継ぎで扱います。
経営・マーケティングのコンサルティング契約(受注者の側の改訂版)では、「広告出稿準備」の支援が、媒体による審査の承認や広告の成果を意味しないことを定義の条で確認し、成果非保証の条にも「広告の費用対効果、広告媒体による審査の承認」を明記しました。広告を出す準備を手伝う契約では、相手方は「審査に通るまで面倒を見てもらえる」と考えがちなので、審査の結果は保証の外であることを、二か所で書いています。
計測の数字が合わないとき
広告の管理画面、Googleアナリティクス、自社の申込みの記録で、CVの数が一致しないことは珍しくありません。数字のずれをめぐって「報告が水増しされている」「計測の設定が悪い」と言われないよう、広告運用とGA分析を受けた代行会社の契約では、計測の不一致・誤差の免責を契約の種類ごとに書き分けています。
| 版 | 免責の事由として列挙したもの |
|---|---|
| 広告運用とGA分析を1本にした版 | Cookieの規制、ユーザーの同意の設定、端末・ブラウザの仕様変更、タグの実装の誤差、第三者による改ざん等 |
| 広告運用の契約(分割後) | 上の事由に加えて、広告配信プラットフォームの仕様変更、審査基準の変更 |
| GA分析の契約(分割後) | 上の事由に加えて、タグの未実装、誤実装、意図しない重複設定等の計測環境の不備 |
分析の契約では、計測環境そのものの不備まで列挙しています。分析の結果は、計測の環境が正しいことを前提にしているからです。
この代行会社の契約では、レポートの提出期限と記載事項(表示回数・クリック率・CV数などの実績、改善の対応の履歴、依頼への対応)を列挙し、月1回のオンラインの定例会議では受注者が議事メモを作って発注者の了承を得る運用も定めています。報告した数字と、その数字に基づいて何を決めたかが記録に残っていれば、後から「聞いていない」と言われる場面が減ります。
KPI・目標値・提案資料の数字
営業の段階で示した「3か月でフォロワー1万人」「問合せ2倍」といった数字は、契約の内容になるのでしょうか。SNS運用支援の申込書と規約のレビューでは、フォロワー数・再生数・売上を保証しない旨と、目標値(KPI)が努力目標である旨が規約にないことを、最重要の指摘の一つとしました。提案時の数字が契約の内容だと主張されたり、錯誤(民法95条)や説明義務違反の主張の足がかりにされたりするおそれがあるためです。
ほかの書類では、目標値の扱いを次のように書いています。
- SNS上のショップ機能への出店支援:KPIを定めても努力目標で、未達は債務不履行ではない。
- 経営・マーケティングのコンサル:初期設計書(ターゲット、コンセプト、商品内容、価格設計、販売導線、集客方法、主要KPI、行動計画)に書いた数値は目安で、保証しない(相手方の要望を受けた改訂で追加)。
- 医療機関向けの営業支援のマッチング:申込書の希望件数は目標値で、達成を保証しない。別紙にも、未達でも債務不履行を理由とする請求をしないと書く。
KPIは、運用の改善の方向を共有するために必要なものです。契約書に書くなとは言えません。書くなら、努力目標であること、未達でも報酬の減額や解除の理由にならないことを同じ箇所に書きます。
同じSNS運用支援の規約のレビューでは、成果とは別に、制作物の出来についての責任の期間も取り上げました。動画などの制作は請負的な業務なので、契約不適合の責任は、発注者が不適合を知った時から1年以内に通知すれば追及できるのが民法の原則です(民法637条1項)。ところが規約は無償修正の義務を定めながら期限を置いていなかったため、確認の完了や投稿の時から一定の期間で区切るよう提案しました。事業者どうしの契約なら期間を短くする特約を置けますが、受注者が知りながら告げなかった不適合は、特約があっても責任を免れない点(同法559条・572条)も付け加えています。月額が期間の対価なのか本数の対価なのかを明記することも、同じ指摘の中で求めました。運用の成果は保証しない、制作物の出来は一定期間だけ責任を負う、と分けて書くのが、混合型の契約の基本です。
非保証と代替の救済を組み合わせる
成果を一切保証しないと書くだけでは、相手方が契約に踏み切れないこともあります。AIを使った発信基盤の構築・運用の追加契約では、成果非保証を貫いたうえで、受注者が自分で管理できる範囲に限って救済を用意しました。
成果非保証と代替の救済(追加契約の構成)
- 成果非保証フォロワー数・表示回数・LINE登録数・個別相談件数・成約・売上・順位を保証しない。成果が出ないことを理由に減額・返還・解除はできない
- 救済1:無償継続初期構築が終わらないときは、完了まで無償で続ける(唯一かつ排他的な責任)
- 救済2:無償延長6か月以内に初成約がなければ最大2か月の無償延長。発注者の側の7つの条件(公開本数、素材の提供、承認の期限、撮影、結果の共有、数値の共有、全額の支払)を満たすことが前提
依頼者からは、条件を満たさないと直ちに延長の権利を失うのは厳しいとの指摘があり、受注者が不充足の事実を特定して通知し、14日以内に是正されない場合に初めて不充足として扱う二段構えに改めました。無償延長の期間には自動更新も月額も適用しないことも明記しています。救済の範囲を受注者の作業(構築の完了、運用の延長)に限り、売上や件数の保証に踏み込まないのが、この設計の要点です。
反対に、売上を保証する特殊な例もあります。商談のアポイントを扱うプラットフォームの運営者が提供するアポ獲得代行の契約では、当初の案の「アポ獲得の成否や商談の成果について、いかなる保証も行わない」という項を改訂で削り、契約時に定めた売上目標の達成を保証し、未達なら未達の割合に応じて支払額を返金する(目標の50%なら支払額の50%を返金)と定めました。保証の適用条件(運営者の指示に従った営業活動と情報の提供、料金の支払、事業内容に大きな変更がないこと、法令違反がないこと)、返金の請求は期間終了後30日以内、審査の結果は最終の決定、紹介を受けて売上が出ているのに売上がないと虚偽の報告をすることの禁止も置いています。成果を保証するなら、保証の条件・請求の期限・判定の方法まで書かないと、保証だけが独り歩きします(アポ獲得の契約はテレアポ代行の契約書)。
営業段階の説明と、成果非保証の限界
Webサイトの制作者(受注者)の依頼で、相手方との契約書をレビューした報告書では、原案の業務に「基本的な検索エンジン最適化(SEO)に関する設定」があるのに、成果を保証しない旨の明記がないことを重大な指摘としました。契約書が沈黙していると、営業の段階の口頭の説明が、そのまま拘束力のある約束として扱われる方向に働きやすいからです。また、検索エンジンのアルゴリズムの変更が、原案の「第三者が提供するサービスの障害、仕様変更」に読み込めるかは微妙だとして、正面から書くよう求めました。
依頼者が作った改訂版では、成果非保証とアルゴリズムの変更の免責が新設され、成果が商品・価格・知名度・競合・広告・集客施策・検索エンジンなど受注者が管理できない要因にも左右されるという理由まで書かれていました。再レビューでは、これを後日の説明義務違反の主張への防御としても機能すると評価しています。一方で、同じ条に「コンバージョンにつながることを目的とした提案および制作を行う」とあり、成果を保証しないと書く条の中に成果を目指す義務を書き込んでいて、設計としてちぐはぐだと指摘しました。最終版では「適切と考えられる構成、導線、情報の設計及び表現を提案する」に弱め、2項に成果非保証、3項にアルゴリズム・仕様の変更の免責を置いています。
条文例成果を保証しない旨(最終版の構成を一般化した例)
- 乙は、甲の事業の内容及び目的を踏まえ、乙が適切と考える構成、導線、情報の設計及び表現を提案する。
- 乙は、検索順位、アクセス数、問合せ件数、申込件数、契約件数、売上、利益その他の成果を保証しない。成果は、甲の商品、価格、知名度、競合の状況、広告、集客施策、検索エンジンその他乙が管理できない要因にも左右される。
- 検索エンジン、広告媒体その他の外部サービスのアルゴリズム、仕様又は審査基準の変更により甲に生じた不利益について、乙は、乙に帰責事由がある場合を除き、責任を負わない。
もっとも、成果非保証の条があっても、営業の段階での説明の誤りまで帳消しにはなりません。相手方が消費者(事業として又は事業のために契約する者を除く個人。消費者契約法2条1項)の場合、勧誘の際に、将来の変動が不確実な事項について断定的判断を提供して誤認させれば、契約を取り消され得ます(同法4条1項2号)。経営・マーケティングのコンサルティング契約のレビューでも、勧誘の時に「必ず売上が伸びる」といった断定をすれば、成果非保証の条項があっても取消しの対象になり得ると説明しました。相手方が本当に事業者かを確かめる仕組みは勧誘のルールと特定商取引法で扱います。
起きがちなことと、契約書での備え
成果非保証は、業務の範囲と表示の責任の条とつながっています。業務の定義が成果を約束していないかは契約の型と業務範囲、広告表現の責任は広告表示の責任分担で確認してください。
よくあるご質問
「成果を保証しない」と一文書けば十分ですか?
十分とはいえません。クリック数・CV・CPA・ROAS・売上・順位・審査の通過・配信の継続など、保証しないものを具体的に列挙し、媒体の審査やアカウントの停止など受注者が支配できない事情の免責も書きます。同じ条に成果を目指す義務を書き込まないことも大切です。
広告アカウントが停止されたら、代行会社の責任になりますか?
原因によります。事務所の書類では、媒体のポリシーの変更・審査の不承認・アカウントの停止は受注者に帰責事由がない限り責任を負わないとし、発注者の素材や文言が原因の不承認も免責とする例があります。
KPIを契約書に書くと危ないですか?
書くこと自体は問題ありませんが、努力目標であり、未達でも債務不履行・減額・解除の理由にならないと同じ箇所に書きます。書かないと、提案時の数字が契約の内容だと主張されるおそれがあります。
管理画面とアナリティクスの数字が違うと言われたら?
Cookieの規制、ユーザーの同意の設定、端末やブラウザの仕様変更、タグの誤差などによる不一致・誤差は責任を負わないと契約に列挙しておきます。分析を受けるなら、計測環境の不備も列挙します。
成果非保証の条項があれば、営業の段階で何を言ってもよいですか?
よくありません。相手方が消費者の場合、勧誘の際に将来の不確実な事項について断定的判断を提供して誤認させれば、成果非保証の条項があっても契約を取り消され得ます(消費者契約法4条1項2号)。
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本ページは一般的な情報提供です。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた広告運用代行・Web集客支援・マーケティング支援の業務委託契約書、MEO・SEOサービスの利用規約、テレアポ・アポ獲得代行・営業代行の契約書、レビュー報告書、ヒヤリングシートなどを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月16日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 表示対策(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)