広告費(媒体費)の負担と精算

広告運用代行の契約で、金額が最も大きく動くのは報酬ではなく広告費です。誰の名義で、どう払い、どう精算するかを決めます。

トップページ › 広告費(媒体費)の負担と精算
受注者のカードで広告費を払い続けている間に発注者の支払が止まると、未回収の額は報酬とは比べものにならなくなります。

このページの要点

  • 広告費は報酬とは別の費用で発注者の負担とし、原則は発注者の名義の決済手段で媒体に直接払う。
  • 立替を認めるなら、前払金かデポジット、又は事前承認制にし、払われなければ配信を続ける義務がないと書く。
  • 立替の精算は実費と手数料に分け、消費税を二重に加算しない。課金の仕組み上、予算と実費が完全には一致しないことも了承を得る。
  • 成果報酬・粗利の分配では、控除する費目と承認の手続、どちらの取り分から引くかを決める。

結論:広告費は報酬と分け、原則は広告主の名義で直接払う

広告運用代行の契約で、金額が最も大きく動くのは報酬ではなく広告費(媒体費。Google・Meta・LINEなどの広告媒体に払う掲載・配信の費用)です。運用手数料を広告費の20%とする契約なら、広告費は報酬の5倍の額になります。受注者が立て替える形にすると、未払いが出たときの損失は報酬とは比べものになりません。事務所の書類では、次の順で決めています。

  1. 広告費は報酬とは別の費用で、広告主(発注者)の負担であると書く。
  2. 原則として、広告主の名義の決済手段(クレジットカードなど)を媒体に登録し、広告主が媒体に直接払う。
  3. 例外として受注者が立て替えるなら、前払金・預り金(デポジット)・事前承認・精算の方法を決める。
  4. 成果報酬や粗利の分配と組み合わせるなら、広告費を売上から引くのか、どちらの取り分から引くのかを決める。

このページでは、この4点を、事務所の契約書・ヒヤリングシート・依頼者とのやり取りから紹介します。広告費の一定割合を報酬にする型は報酬の決め方で、広告アカウントの名義は広告アカウントの名義と終了時の引継ぎで扱います。

名義と支払の3つの型と、ヒヤリングの問い

採用支援・Web広告・LP制作を手がける会社から、クライアント向け(受注)とパートナー・フリーランス向け(発注)の2本の基本契約の作成を受けたとき、事務所はヒヤリングシートに次の問いを置きました。

ヒヤリングの問いと理由広告・採用媒体の運用を含む基本契約(クライアント向け)

  1. 広告費(媒体費)の負担・精算方法はどうしますか。(選択肢:クライアントが媒体へ直接支払う/貴社が立て替えて実費精算/広告費は扱わない/お任せ)

    注記に「業務委託料と広告費(実費)を分けて定めるのが安全」と書きました。報酬と広告費を一つの金額にまとめると、広告費が増えた月に報酬が目減りし、未払いのときに何の代金が払われていないのかも分からなくなるためです。

  2. Web広告の運用について、成果の非保証、媒体側の要因(ポリシーの変更・アカウントの停止・審査落ちなど)の責任分担、広告アカウントの所有・管理権限を誰に帰属させるかを決めていますか。

    広告の運用に固有の論点は、一般の業務委託の条とは別に「特則」として独立の章で聞いています。

  3. パートナーが立て替えた実費(素材・広告費など)をどう精算しますか。

    発注者の側の契約では、外部のパートナーが広告費を立て替える場面を想定し、精算の方法を聞いています。

回答をもとにした契約書の「広告・採用媒体運用等に関する特則」では、媒体費等は報酬とは別の費用で発注者の負担とし、原則として発注者の名義の決済手段を媒体に登録して直接支払うと定めました。ほかの受注者の側の書類も同じ考え方です。

広告費の扱いを定めた事務所の書類
契約広告費の負担支払の方法・立替の条件
個人の広告運用者の基本契約広告出稿費・媒体費・決済手数料・外部ツール利用料・素材購入費などの実費は発注者の負担報酬の条とは別の項で実費として列挙
MAツールのローンチ構築・運用利用料・決済手数料・広告費等は発注者の負担立替は事前の承諾がある場合に限る
AIを使った発信基盤の構築・運用外部ツール・生成AI・API・広告の料金は発注者の負担原則として発注者の名義で契約し、発注者が直接払う。立替は事前承認制
経営・マーケティングのコンサル広告費・撮影費・制作費・システム利用料などは報酬外の実費受注者が支出するときは事前の承諾(緊急かつ軽微なものを除く)、30日以内に支払
集客支援・マーケティングの基本契約広告出稿費は原則として発注者が媒体に直接払う立て替える場合で月の額が一定額を超えるときは事前に預託

反対に、広告費の支払者を条文に置かず、運用に委ねる書き方もあります。LP制作・広告運用代行・SNSの初期構築をまとめた個人の支援者の契約(2024年)は、広告費は毎月実費で発生し、代行手数料は広告費の20%とする定めで、広告費を誰が媒体に払うのか(発注者のアカウントで直接払うのか、受注者が立て替えるのか)は、条文では特定しない形でした。広告運用とGA分析の代行会社の契約も、媒体費は発注者が直接払う前提の書き方で、立替や預りの条項は置いていません。直接払いを前提にするなら、その前提を一文で書いておくと、受注者のカードで払った月の精算をめぐる争いを防げます。

立替を引き受けるときの前払金・デポジット・事前承認

広告主がカードを登録できない、媒体の請求書払いの審査に通らない、といった事情で、受注者が広告費を立て替えることがあります。立替を認めるときは、受注者が先にお金を出し続ける形にならないよう、次の3つの手当てのいずれかを置いています。

立替を認める場合の3つの手当て

立替前の前払金

払われなければ配信を続けない

  • 合意があれば受注者が立て替えられ、発注者は実費と手数料等を払う
  • 受注者は立替の前に相当額の前払金を求められる
  • 前払金が払われなければ、立替も配信も続ける義務はない

預り金(デポジット)

一定額を超える月は事前に預ける

  • 月の広告出稿費が一定額を超える立替は、事前に預託を受ける
  • 預託金は実費に充て、月末に精算
  • 残額は翌月に繰り越すか、契約終了時に返還

事前承認+手数料

1件ごとに承認を得てから払う

  • 立替は事前承認制。継続に直ちに必要な少額の緊急の支出だけを例外にする
  • 精算は立替実費+事務手数料
  • 領収書の写しを交付する

集客支援・マーケティングの基本契約(受注者の側)の預託の条では、あわせて、実費が著しく高額になる見込みのときは事前に通知して承諾を得ることも定めています。預託金の残額の扱い(翌月に繰り越すか、返すか)は、契約の途中で終わったときに必ず問題になるので、終了時の返還まで書いておきます。

AIを使った発信基盤の構築・運用の追加契約では、立替の精算について依頼者から指摘を受け、条文を細かく直しました。

事務所の書類での改訂 立替金の精算(依頼者の指摘を受けた改訂)

精算する金額

改訂前当初の案:立替実費と事務手数料を請求できる旨だけで、消費税の扱いがはっきりしない
改訂後立替実費(第三者に現に払った額。消費税込み)+事務手数料10%(+手数料の分の消費税のみ)。実費に消費税を二重に加算しないと明記し、領収書の写しを交付する

媒体に払った広告費にはすでに消費税が含まれていることが多く、さらに消費税を上乗せして請求すると過大請求の争いになります。手数料の分だけに消費税を付けると書いて計算を一つにしました。

事前承認の例外

改訂前当初の案:立替は事前承認制
改訂後継続に直ちに必要で、1件あたり一定額以下の緊急かつ軽微な支出だけを事前承認の例外にする

配信の継続に欠かせない少額の支払まで承認待ちにすると業務が止まります。例外を金額と緊急性の両方で絞りました。

立替や実費の精算を契約に書かないと、どうなるでしょうか。準委任では、受任者は事務の処理に必要な費用を支出したとき、その費用と利息の償還を請求できます(民法650条1項)。ところが、SNS運用支援の規約のレビューでは、規約の「合意していない実費は請求しない」という一文が、この費用償還の請求を事実上放棄させていると指摘しました。撮影のキャンセル費用も「都度協議」とされ、回収の根拠がありませんでした。改善として、典型的な実費の標準の扱い、事前承認が要る金額の基準、時期別のキャンセル料を置くよう提案しています。

採用向けの広告を含む制作会社の契約では、広告費の条が版ごとに具体的になっていきました。当初の案には広告費の定めがなく、第2版で「広告費は乙(発注者)の実費負担とし、事前に甲の提示する見積内容に対して乙の書面による承認を得た上で支出」と定め、さらに改訂で別紙の報酬一覧表に、初期費用・月額費用・LPの保守運用費と並べて、広告費(実費、見積書に準拠、書面承認が必須)と広告運用手数料(実費の広告費の20%)を一覧にしています。

もう一つ決めておきたいのが、何を「広告費」と呼ぶかです。広告費が手数料の計算の基礎になる契約では、範囲がずれると手数料もずれます。広告運用とGA分析の代行会社の契約は、手数料の基礎を「甲が当該月に実施した広告媒体費用(税別)」と書き、消費税を含めないことをはっきりさせました。個人の広告運用者の基本契約は、「広告運用費の定義、運用対象媒体、対象期間及び計算基礎」に疑義が出ないよう個別契約で具体化すると定め、外部ツールの利用料や素材の購入費は実費として別に列挙しています。MAツール導線の契約では、広告費を「広告配信事業者・広告代理店等への掲載・配信費の総額」と定義しました。媒体費だけか、ツール費や制作費まで含むのか、税込みか税別かを一文で決めておくと、請求のたびの確認が要らなくなります。

予算と実費のずれ・予算超過・決済手段の目的外使用

広告媒体の課金は、入札とクリック・表示の数で決まるため、月の実費が承認した予算とぴったり一致するとは限りません。クライアント向けの基本契約では、予算・期間・KPI(目標とする指標)は個別契約又は別紙で定め、課金の仕組み上、実際の媒体費が承認した予算と完全には一致しない場合があることを発注者が了承する、と書いています。数%のずれで「予算を超えた分は払わない」と言われないための一文です。

同じ会社の発注者の側の契約(パートナー・フリーランス向け)では、立場が逆になるので、外部のパートナーが広告費を使いすぎないことに重点を置いています。

条文例外部パートナーの広告費の管理(発注者の側の例)

  1. 乙は、甲の事前の承認を得た広告予算、入札上限、配信地域及び媒体を超えて広告費を発生させてはならない。
  2. 乙は、広告予算の超過のおそれ、広告媒体のアカウントの停止若しくは制限又は表示に関する法令違反のおそれを認識したときは、直ちに甲に報告する。
  3. 乙が甲又は甲の顧客の名義の決済手段により広告費を支払う場合、乙は当該決済手段を本業務以外の目的に使用してはならない。
  4. 乙の義務違反により甲に生じた損害には、無駄に支出された広告費を含む。

事務所の書類の条文(予算超過の禁止、停止・超過の報告、決済手段の目的外使用の禁止、損害に「広告費の無駄」を含めること)を一般化した例です。

広告費の精算は、パートナーの側では事前承認制とし、領収書で精算すると定めています。受注者の側と発注者の側で、広告費の条の重点が「立て替えさせられないこと」と「使いすぎさせないこと」に分かれるのが分かります。

中途終了・賠償の上限と広告費

広告費は、契約が途中で終わったときと、損害賠償の上限を計算するときにも顔を出します。クライアント向けの基本契約では、次の2つを置きました。

  • 発注者の都合で途中で終了したときは、取消しができなくなった媒体費等も発注者の負担とする。予約型の広告や掲載枠のように、止めても戻らない費用があるためです。
  • 受注者の賠償の上限は、原因となった個別契約の報酬の総額とし、媒体費等・外部サービスの利用料など受注者が第三者に払う実費は、この報酬の総額に含めない。

2つ目の手当ては、広告費を受注者が立て替えて報酬とまとめて請求している場合に効きます。「受け取った金額の総額」を上限にすると、広告費まで含めた大きな額が上限になってしまうからです。賠償の上限の比較は外部パートナー・競業避止・賠償上限でまとめています。

また、支払が遅れたときに広告費をどこまで止められるかも、広告費の条とあわせて決めます。立替をしているなら、支払遅延のときに配信を止められると書いておかないと、立替額だけが膨らみます(契約期間と中途解約・支払遅延時の配信停止)。

成果報酬・粗利シェアで広告費をどう引くか

報酬を売上や粗利に連動させる契約では、広告費を売上から差し引くかどうかで、双方の取り分が大きく変わります。事務所の書類には、次のような設計がありました。

成果連動の報酬と広告費の扱い
契約広告費の扱い手続
粗利シェアのマーケ・制作支援(粗利×35%)粗利=総売上−本件経費。本件経費は広告宣伝費・決済手数料・合意した費用で、受注者が事前に書面で申請し、発注者が合理性・必要性を確認して承認したものに限り控除発注者が月末締めで計算書を翌月10日までに交付、受注者は5営業日以内に異議
SNSプロデュース+作品販売の収益分配承認費用(広告の出稿費用を含む)は相手方の負担。受注者が立て替え、相手方の取得額から控除し、不足は繰り越して終了時に現金で清算少額の費用は包括承認、計算書に控除額と残額を記載
MAツール導線のレベニューシェア(純売上×30%)純売上=決済完了額−決済手数料。追加契約の報酬・費用・立替金は、純売上の計算で控除する費目に入れない控除できるのは決済手数料だけであることを相互に確認

収益分配のプロモーション契約では、依頼者から「費用の実質的な負担を、全額相手方の取り分から引く形にしたい」という要望がありました。それまでの案は、費用を売上から引いてから分ける形で、実質は折半になっていたためです。改訂で、承認した費用は相手方の負担とし、受注者が立て替えて相手方の取得額から控除する形に改め、報告書では売上と費用の数値例で、相手方の受取額がどう変わるかを示しました。

この契約の提案書の段階では、費用の手続も整えています。依頼者のベースのドラフトは「相手方の承認の上で相手方負担」とだけ書いていましたが、事前に見積りを示して承認を得る(チャットでもよい)こと、原則として分配の計算の上で控除すること、承認のない費用は受注者の負担とすることを提案しました。受任者の費用の償還(民法650条1項)について、承認の有無で扱いを分ける特則を置く形です。分配の計算の透明性のために、計算書の交付と、根拠の資料(ECの管理画面や決済の明細)を相手方が見られる権利も置いています。委任事務の報告の義務(同法645条)を具体的にしたものです。

ご相談と回答収益分配型の契約での費用の回収

  1. プロモーションの費用6か月分を全額回収してから、相手方への分配を始めたいのですが、今の書き方で大丈夫ですか。

    当初はご相談の文言から「発生済みの費用を優先して充当する」形で設計していましたが、ご意向がはっきりしたので、「発生の前後を問わず総額に達するまで先に充当し、その後に1対1で分ける」形に改めました。将来の費用まで先に回収する構成は、途中で終わったときに「役務を提供する前に対価を取った」と争われ得るので、終了時に、実際に発生した費用の累計を超えて回収していた分は清算で返す担保を置いています。

MAツールの導線を構築して売上の一定割合を受け取る契約では、広告費が増えた局面への備えも置いています。発注者の広告宣伝費(広告配信事業者・広告代理店などへの掲載・配信費の総額)がいずれかの暦月で一定額を超えたら、成果報酬の料率と算出方法を協議し、協議ではCPA(1件の獲得にかかった広告費)やLTV(1人の顧客が取引の期間に払う総額)などのデータを互いに共有し、変更は書面で合意する、という条です。広告費を大きく投じて売上が膨らむと、導線の貢献以上に成果報酬が増えるため、見直しのきっかけを条文にしておきました。成果報酬の定義そのものは報酬の決め方で扱います。

起きがちなことと、契約書での備え

広告費の条は、報酬・アカウント・解約の条とつながっています。業務の範囲は契約の型と業務範囲、外部パートナーに運用を出す場合は外部パートナーとの契約もあわせてご覧ください。

よくあるご質問

広告費は誰のクレジットカードで払うべきですか?

原則は広告主(発注者)の名義の決済手段を媒体に登録し、広告主が直接払う形です。事務所の受注者の側の書類は、広告費を報酬とは別の費用で発注者の負担とし、この直接払いを原則にしています。

広告費を立て替える場合、契約書に何を書けばよいですか?

立替の前に前払金を受けられること、払われなければ立替も配信も続けないこと、又は一定額を超える月は預り金を受けて月末に精算することを書きます。精算は立替実費と手数料に分け、消費税を二重に加算しないことも明記します。

予算どおりに消化されず、少し超えてしまったら?

課金の仕組み上、実際の媒体費が承認した予算と完全には一致しない場合があることを発注者が了承する条を置いておくと、わずかな超過で支払を拒まれる争いを防げます。

成果報酬の計算で広告費は差し引きますか?

契約で決めます。粗利から分ける型では、広告宣伝費を事前の承認を条件に売上から控除する例があります。収益分配の契約で、承認した費用を相手方の取り分から控除する形に改めた例もあります。

途中で解約されたとき、予約済みの広告費は誰が負担しますか?

定めがないと争いになります。事務所の書類では、発注者の都合による中途終了の場合、取消しができなくなった媒体費等も発注者の負担と定めています。

あわせて読みたい、関連する別のガイド

あわせて読みたいページ

本ページは一般的な情報提供です。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた広告運用代行・Web集客支援・マーケティング支援の業務委託契約書、MEO・SEOサービスの利用規約、テレアポ・アポ獲得代行・営業代行の契約書、レビュー報告書、ヒヤリングシートなどを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月16日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / 表示対策(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会)

広告運用代行・集客支援・営業代行の契約書でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

公式LINEで無料相談する
アトラス行政書士法人 公式LINEの友だち追加QRコード
  1. 公式LINEを友だち追加
  2. 「広告運用代行・集客支援の契約書ガイドを見た」とメッセージを送信
  3. ご相談内容を確認し、LINEでご返信します(24時間・土日祝対応)

相談無料です。料金が発生するのは、お申込みいただいた書類の作成・点検だけです。

LINEで友だち追加して無料相談する

ご依頼・納品の流れを見る